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we do not stop playing because we grow old, we grow old because we stop playing. 人は老いるから遊ばなくなるのではない、遊ばなくなるから老いるのだ

映画感想文「映画フィッシュマンズ」倫理観とエンタメや芸術は地続きにある

どーも!中山そーじろです。
 
 
 
本当にみんなに大切にされているバンド、音楽なんだな
 
 
 
やっとフィッシュマンズの映画を観て来れました。
 
思ったよりライトな内容だったな、という感想です。
 
 

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1)フィッシュマンズの何が好きかで分かれる
 
すごく誠意と礼儀を持って丁寧に作られたドキュメンタリーだなと。監督の「こーゆー風に面白くしたろ」という自意識は全然感じないしバンドメンバーや関係者のインタビューの言葉選びもとても誠実で真面目。
 
そういったフィッシュマンズの誠実で真面目で、特殊な浮遊感で優しく包んでくれるような部分が好きで大切にしてる人にはとても良い映画だったんだろうなと思うし、あれだけ丁寧に作ってたらそりゃ3時間になっちゃうのも納得です。
 
 
私がフィッシュマンズ好きな理由はやはり佐藤伸治という強烈な才能です。
ポラリスの大ファンからフィッシュマンズ聴き始めたので柏原さんも本当に好きですが)。
 
それも「フワフワしてて不思議で魅力的で優しい天才ロックヒーロー」的な部分ではなく、
 
奥に感じる「孤高でストイックでエゴで狂気的などす黒い奇才のエグみ」の部分。
 
 
正直あの歌唱の仕方、曲構成、詩など「かなりの異常性がなければ生まれえないもの」であり、その部分にとても魅力を感じるし、陶酔できるし、感動します。
 
 
「なんであんなすごい曲たちが生まれたのか、佐藤さんとはなんなのか」、その異常過ぎるエグみに溢れた原液部分が生み出される瞬間とかが観たかったのですが…
 
マジでそれはメンバーも誰も知らないし、佐藤さん本人も言語化などできなかったのだなとわかりました。
 
 
その一番知りたい部分が描かれてなかった(誰も知らないのだから描きようがない)ので私は物足りないと思っただけで、3時間も長く思わないとても良くまとめられた映画だとは思います。こればかりは求めるものの違いだなと。
 
 
 
2)倫理観とエンタメや芸術が地続きにある国
 
「死者をエンタメ昇華しない(できない)のは日本ならではだよな~」と。
 
作ろうと思ったら佐藤氏のエグイ部分とかを意図的に切り取ってエンタメドキュメンタリー表現にはある程度できたと思うんです(目いっちゃってるライブ演奏の部分とかを長めに繋げたり)、でもそれはしてない。
 
やっぱり日本では「死者を意図的に悲劇のヒーローに仕立ててドラマ性を強めたり、面白おかしく表現してやろう」ってのはNGなんだよなと、
 
特に最後の方でメンバーたちの未だにその話をする時の悲しみや苦しみが伝わってくる引きずり様を見て、「とてもこれ以上は踏み込めないし、意図的に装飾表現するなんてのもできない」というのが監督の本音な気がします。
 
 
 
比較的海外では「映画は作品なんだから、それ自体のエンタメ性や芸術性、何より面白みが一番優先だろ」と監督や表現者は当たり前に言いますし、それに対する理解が観る側にもあります。
 
 
クイーンの映画を元メンバーが監修してんのに「フレディのエイズ告白は(史実と違うけど)ライブ前の方が感動するべ、変えちゃえ!」とかしちゃったり、
 
家族に何も知らせずに「ブルース・リーは嫌なヤツだった」という役柄にしてブルースの娘に文句言われても全然気にもしないタランティーノとか、
 
 
 
そーゆーことが日本の国民性(もしくは宗教観、倫理観)ではできない。
 
 
「これを出すことで家族ひとりでも傷付けるなら辞めよう」となる。倫理観とエンタメや芸術が地続きで繋がっている。これは良いも悪いもない日本人ならではの感性なのかなと思います。
 
 
繊細で誠実で思いやりのある美しい良い部分だな、と思う反面、「対象が日本人だとそーゆーのすごい敏感なくせに外人に関してはそういった作品全然問題視せずにエンタメとして楽しんでるよな」、とも思います。
 
 
 
私は性根が悪い人間なのでただ観る側というとても無責任な立場から「悪魔に魂売って得た狂気的な表現もっと見せてくれよ、周囲への配慮なんていいからもっと異常なすごいの見せてくれよ」というのが半分あるんですが…
 
 
まぁ、あのメンバーや関係者の誠実な気持ち、大切にしたい思い出と音楽、そしてそれを鳴らし続けたいと願っての再結成活動している姿勢を見たら、そんな身勝手なこと言えません。野暮です。一瞬でも「正直物足りなかったな…もっとこう…」と思ってしまった自分が野暮でした。
 
 
 
3)ミュージシャンという職業の大変さ
 
売れなきゃ食っていけない、食っていけないとどんどん荒んでいく。
 
良いものを追求し続ける、完成させるとまた次のレベルの何かを模索、その繰り返し。
 
追及し続けるとどんどん大切な人たちが離れていく、孤独になっていく、信じられなくなってくる。
 
 
 
佐藤さんからしたら柏原さんが抜けるのは最後の痛恨の一撃だったんだろうし、「男たちの分かれ」での「10年後に誰が残ってるかって…だって結局減ってるじゃん」というMCの表情がもうツラ過ぎて、その後のIN THE FLIGHTでの「やっぱり何も出来ないよ」の歌詞で毎回胸が締め付けられます。
 
 
 
すごいものを作れば作る程大切なものを失っていくさだめのような
 
マジで悪魔との契約みたいだなと
 
 
 
改めて本当に大変な職業
 
華やかに見えるけどずっと苦行
 
 
 
「息子がミューシャンやりたい、芸術家やりたい」ってなったらなんて答えようか…
 
とずっと悩んでいます。
 
 
 
 
一番衝撃的だったのは「えっ!詩が先なの!?」でした。
 
本当に色褪せない稀有なバンド。これは茂木さんとか亡くなった後でもそれぞれの世代の「いいモノ」に敏感な意識高い若者たちに引き継がれて残るんだろうな~と思います。